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自己紹介

 2018年4月に京都大学から異動してまいりました。

私は、野菜で有名な矢澤 進教授のもとで学生、助手、准教授時代を過ごし、農学の醍醐味を学んできました。非常に厳しい先生でしたが、この厳しさに堪えないと大学に入った意味がないと感じ師事しました。農学で最も大事なのは生き物を見抜く観察眼であることを学んだと思っています。そして私は、植物だけではなく師の動きのひとつひとつを必死に観察しました。人は一人で歩むものではありません。アイデア、材料、資金いろいろなおぜん立てがなされて初めて研究ができます。自分の手柄、というのはほんのちょっとです。先人たちからのバトンを受けています。最後のアンカーは君かもしれません。でも、実験室に入るとき、圃場で作業するとき、発表するときには今日も研究ができることに対し、皆さんを支える全ての人に感謝して欲しいと思います。

 植物・人間関係学研究室の林 孝洋教授は京都大学時代にお世話になった先生であり、遠慮なく議論ができます。研究室としては別ですが連携しながら面白いことができるようにしていきたいと思います。私は長年、花卉を材料に研究をしてきましたが、「こんな役に立たないものを栽培する研究をしても仕方がない」と悩み、結局野菜を扱う研究に自ら移りました。これで納得し、気持ちよく野菜の研究をしていたのですが、何か心に忘れ物をしたような気持でした。花は心に潤いを与えるとか、心の健康に役立つとかと言って自分の気持ちをごまかしながら花の研究をやることはできませんでした。ところが、植物・人間関係学研究室で行っている「花を使った心のセラピー」はまさに花卉園芸学が目をそらせてきた消費者本位の学問ではないでしょうか。この研究室と一緒に花卉園芸学を行えば、単なる生産園芸ではく真の花卉園芸学研究室を作ることができるのではないかと思いました。香りや花の色がどのように人の心に働きかけて、どのように加工すれば生活に欠かせない商品ができるのか。これがまさに花卉の持つポテンシャルであり、無限の産業創成の可能性を感じている点です。実際に、いろいろな企業が参加するのが近大特有で、企業の産業的視点は実学においては非常に重要です。

 また、農業は単作化に舵を切って以来、化学薬品に依存し、環境の破壊、健康の破壊を余儀なくされています。安全性が保証されているのが農薬ですから、散布して悪いことはありませんが、必要以上に散布しているのが現状であると思います。花卉園芸学研究室の一つのテーマとして無農薬栽培は1つ目の柱です。これは社会的な問題点に対する私の挑戦です。

 次に、花を切り花や鉢花としてだけではなく、食品として、成分を抽出して化粧品として、さらには着色料として加工物を生産する、というのは花の産業規模を拡大するうえで重要です。これが2つ目の柱です。これは消費者へのアプローチであり企業的なセンスが必要です。

 花の模様や香りについてより多様化を目指します。民間が行っているような交雑育種だけではなく、バイオテクノロジーを駆使してこの世にはない作物を作ってみたいと思います。多様化が3つ目の柱です。

 ここ数年、急速な発展をしている次世代シークエンス等の最新技術を用いて、遺伝子の特定やメカニズムの解明を行い、生物の不思議にアプローチします。知る喜び、これが第4の柱です。

 さあ、感謝しながらプレーを楽しみましょう。君たちがプレーするグランドを整備して待っています。